愛する石と「さようなら」をした話


石が好きだ
ブレスレットもネックレスも原石も
数えきれないくらい持っている

前日の夕食を思い出せない時もあるというのに
石たちに関しては
いつ、どこでお迎えしたものか、全て覚えている
それを愛と呼ぶのかは分からないから
そういう星の下に生まれたのだ、と考えることにする




どんなに大好きな人とでも必ず
「別れのとき」があるように
石との間にも「別れのとき」は存在する

目と目が合った瞬間に
火花散るように惹かれ合った出会いでも
なんとなく気になる、から
すごく気になる、に変化して
忘れられない…!に到達した出会いでも
出会い方は何であれ
必ず「そのとき」は訪れる




つい最近も、とある石とお別れをした
わたしが辛いときや
頑張りたいときに手に取っては
背中を押してもらったり
勇気をもらったりしていた子だ

本当はまだ一緒にいられた

だけれど
その子を通して見る未来と
いまのわたしが行きたい未来との間に
大きな隔たりがあること
そして
その子を通して見る未来は
いまのわたしが超えたい壁であることに気が付いて
地球に還すことを決めた


当然だけど
すぐには決められなかった
思い出もたくさんあったし
一緒に同じ夢を描いて二人三脚で歩いてきた
大切な仲間だったから

けれど
いまのわたしが行きたい未来を思い描いたときに
その子と一緒にいる未来は描けなかった

正確に言うと
その未来を「思い描くこと」は出来た
しかしそこには
聞くに耐えない不協和音が響いていた

ああこれは、もうおしまいなんだな、とおもった




お別れすることを決めて
それを石に告げたときの
あの子の
ホッとしたような優しい笑顔を
わたしは忘れられない
あんなに優しい顔は
いままでにいちども見たことがない
いつもわたしを奮い立たせてくれる存在だったから

掌に載せたその子から
わたしの決断を心から喜んで
応援してくれていることが伝わってきて
泣いてしまった

どんなときも無償の愛で
わたしのそばにいてくれたこと
どんなときもわたしのために
全力で力を貸してくれていたこと
きっとわたしが愛する以上に愛してくれていたことを
最後の最後で本当に理解して
泣いてしまった


いざ地球に還すそのときには
とても穏やかな顔をしていた
やりきったよ、悔いはないよ、という顔

わたしももう、涙は出なかった
石の意志をしっかり受け取ったから

もう二度と
その手を取ることは出来ないけれど
地球の一部として
これからもきっと側にいてくれるから




長々と書いてしまったけれど
わたしが愛した石へのお別れの言葉と共に
この記事を終わりにする


そしてわたしと同じように石を愛する人へ
これから愛したいと願う人へ
ここまで読んでくれたあなたへ

どうか
いまそばにいる石たちと
これから出会う石たちと
たくさんたくさん愛し合ってください

そして出来たらこの話と感想を
あなたの愛する石にも伝えてください

石を愛するあなたが
彼らと共に行く日々が
たくさんの光に満ちていますように



✶✶



大好きだった、あの石へ

寂しいけれど大丈夫だよ
これはあなたが
望んだことでもあったんだね

ありがとう
あなたがいてくれたから
わたしはここまで来ることが出来ました

どうかそこから見ていてね
あとはもう、やるだけだ

あなたと描いた夢の上に
新たな大きな夢を描くよ

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The real voyage of discovery consists not in seeking new landscapes,but in having new eyes. --- Marcel Proust

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