歯が痛い話


2週間くらい前、突然歯が痛くなった。
左の奥歯で、上か下かも分からない。
噛んだときにチリッとした痛みが広がる。
アルミホイルを噛んだときの、もっと強烈なやつ。

噛むとしみる。
だけど冷たいものや熱いものはしみない。
なんなんだ、虫歯じゃないのか。
虫歯じゃないならしばらく様子を見て考えようかな、
だって歯医者が、だーい嫌いだから!!


……と思って1週間様子を見たけれど
残念なことに、良くならなかった。
痛み止めを飲んだら2日間くらい痛みは軽くなったけど
(1回しか飲んでないのに…)
やっぱり、痛いものは痛かった。

ものすごく!
強烈に!!
痛い!!!!
…な痛みじゃなくて
地味〜に、地味〜に、痛いのだ。
じんわりと日常生活が痛みに浸食されていくのはストレスだ。
これがいつまでも続くのは嫌だな、と思った。



歯医者さんは大嫌いだけど
幸か不幸かいま住んでいるマンションには
歯科医院が入っている。
コンビニよりスーパーよりドラッグストアより近くにある。
予約しないでふらっと行って待ち時間があろうとも
いったん帰宅して、すぐに再訪できてしまう距離にある。


だから行って来た。
意を決して行って来た。

案の定
「ご予約があるので40分お待ちいただきますが…」と言われたので
いったん帰宅して出直した。
歯医者さんが近い(近すぎる)生活って良いな。



基本的にわたしはいつも
自分の頭で考えうるいちばん最悪なパターンを想定して事に及ぶ。

だから今回も
「あー、これはひどい虫歯ですね、神経取っちゃいましょうね!」
と言われることを覚悟して行った。

なんなら
「歯、抜いちゃいましょうか」
「インプラントにしましょうか」まで想像した。

「痛くしないでください!!」て言うところまで想像した。
容易い想像だった。



ところがどっこい
白髪頭で人が良さそうな
だけど優しい声で多過ぎる情報量をたたみかけてくる
たぶんドSな歯科医はわたしにこう言った。


「原因不明ですね」。



…………どういうことだ。
わたしは歯が痛くて此処に来たのに
原因が分からないなんてことあるのか…?



「だって、ここもここも痛くないでしょ?
こんなことしても痛くないでしょ?
(なんか痛そうでひどいことをされているのをイメージして下さい)
だから虫歯の痛みじゃないんですよね。
ほかに原因になりそうなものもないし」


この医者、ヤブ医者なんじゃないかと、ちょっとだけ思った。
だって!歯が痛くて来たのに!
原因不明てなんだよ!!!て心の中で叫んだ。


「でも虫歯はあるので治療しましょう。
痛くはないみたいだけど、あったからね。
その前にクリーニングしておきましょうか」

て、ガシガシゴリゴリ、クリーニングされた。
歯医者であんなにガシガシゴリゴリなクリーニングされたことない。
それだけ口内が汚かったのかもしれないが
それにしても、あんなにゴリゴリやられたことはない。
でも痛くはなかったから、きっと上手なんだと思う。
間違いなくドSだとも思うけど。


ガシガシゴリゴリなクリーニングと
ガシガシゴリゴリな歯磨き指導を終えて

「じゃ、次から治療とクリーニングね。
奥歯の痛いのは様子見ね。
まだ痛かったらそのとき言ってね。
頑張りましょうね」

と言われて、帰って来た。
クリーニング、まだやるのか…と思った。
当然だけど、歯はまだ、痛かった。



それから数日経って
わたしの歯には、いま、どこにも痛いところはない。

ガシガシゴリゴリのクリーニングの影響か
口内にはしばらく違和感はあったし
左奥歯のチリつく痛みも残っていたけど
いつの間にかになくなった。


なんだったんだ…と思うし
なんなんだよ〜!とも思うけど
なぜ歯が痛くなったのかの、その理由。
意を決して歯医者に行って
「虫歯の治療」
「歯のクリーニング」以上に得た効果。
それが何かを
あの地味〜な痛みから解放されたわたしは知っている。



それらは
「自分の心の声を無視しないで」のサインだったのだ。

「自分を愛してあげて、ケアしてあげて」のサイン。

得たものは
「自分の心の声を聞くことができた、幸福感」。



そんなの当たり前でしょ、と思われる方もいると思う。
歯が痛くなったら歯医者に行けば良いだけじゃん、と。


でも、わたしは歯医者が大嫌いなのだ。
病院全般大嫌いだけど、歯医者がいちばん大嫌いだ。
だけど、ご存知の通り、歯の病気は自然治癒しない。
痛みが勝手に引きました、治りました、なんてことは
ルルドのマリア様に祈ったって、起きてくれはしないのだ。


だからたぶん、
そういう「やらざるを得なくて」
「ずっと続くと嫌な痛み」でなければ
わたしは歯医者に行かないだろうと
「自分を愛する」行動を起こさないだろうと
お空の上の人と、わたしの中の人が判断したに違いない。



本当はわたしにも分かっていた。
たぶん、この歯の痛みに原因なんてないことを。
だから余計に行きたくなかった。
原因不明なのに行く意味はあるのかと。

でも、これは無視してはいけないサインだな、とも思った。
これを無視してしまったら、わたしは何も変わらない。

だから勇気を出して行ったのだ。
大嫌いな、歯医者さんに。



自分に優しくしなさい
人の手(助け)を借りなさい
自分を愛する喜びを知りなさい-------



頭では分かっていても
自分のケアや
誰かに助けを求めることを、ついつい後回しにしてしまうことは
きっと、どんな人にも経験があると思う。

なんとかなる、と思っちゃうんだよね、
でも、なんともならないんですよ。
喉元過ぎれば、、で
「なんとかなってる」ように見えてるだけで
その問題が解消されない限り
何度でも同じ痛み(課題)がやってくる。


だから、どんな小さな声でも無視しちゃいけないの。
小さな違和感が積もり積もって大きな岩みたいになって
重たくずっしりとのしかかっているのにそれに気付かない、なんて
心が死んじゃってるのと同じことだと思う。


歯医者大嫌いで逃げまわっていたわたしが
偉そうに言えることじゃないけど、
病院大嫌いで
また逃げ出しそうなわたしが言うことでは全然ないんだけど、
自戒を込めて、声を大にして言う。


心と体の声、ちゃんと聞きましょう。
小さな小さな声でも聞き逃さないようにしましょう。
小さな小さな声を聞こえないふりをしていると
本当に聞こえなくなっちゃうから。
だからそのまえに、
大切な人を想うように、自分のことを想いましょう。


わたしも、歯医者にちゃんと通うから、
先生ドSだけどちゃんと通うから、
何かあったらすぐ自分に聞くようにするから、
逃げ出さないから、
歯医者だけの話じゃないから、
だからこれを読んでくれているそこの優しいあなたも、
このご自愛チャレンジ、一緒にやりましょう。


ひとりひとりが
誰かを愛するように自分を愛せたら、
いや
誰かを愛そうとする前に
まずは自分を愛することができたなら、
きっと、世界の色が変わると思ってます。

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The real voyage of discovery consists not in seeking new landscapes,but in having new eyes. --- Marcel Proust

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