「天気の子」は「過去と、自分を超える物語」


「天気の子」公開から1ヶ月
もうご覧になった方も多いのではないでしょうか
かくいうわたしは片手の指の本数は観ました

観るたびに感じることがいろいろあって
ようやくわたしなりの正解に辿り着いたので
ここに書いていきますね


わたしの考察は
ファンタジーだと思って読んでいただけるとちょうどいいかも知れません
しかし盛大にネタバレしますので
苦手な方はご注意ください


天気の子、あらすじをざっくり紹介すると
異常気象で雨が降り続く東京で
家出して東京に出てきた少年、帆高と
天気を晴れに出来る不思議な力を持つ少女、陽菜とが出会って
「世界の形を変える」おはなしです

これ、わたしさいしょは
自分には何の力もないと思っている人が
不思議な力を持つ欲のない人を盛り立て、お金を稼がせて
それに疲れちゃった能力者に
まだ終わってない!とか言って、まだまだ力を使わせようとする、
そんないびつな関係のお話かなとおもったんですが
だいぶとんちんかんな発想でした
(そして新海監督がそんなお話を描くわけがない)


そうではなくて
「君の名は。」からの「天気の子」
この作品がわたしたちに訴えてくることの最たるものは

『わたしたちひとりひとりが創造主である』

ということでは、と感じています

✦✦

陽菜の持つ不思議な力
「天気を晴れにすることが出来る力」は
劇中では「鳥居をくぐって得た」ことになっていますがこれは
祈りながら鳥居をくぐる=決意をすることによって
「その力を使えるようになった」ということ

陽菜に特別な才能があったとか
陽菜が選ばれた人間だからというのではなくて
ほんとうは誰もが潜在的に持っていて、使える力、です

「天気を晴れにすることができる力」は
「思い通りの未来を創造する力」
魔法でもなんでもなく
わたしたちが日々、意識的無意識的に使っている力です


たとえば
「今日は何かいいことがありそうな気がする!」とおもったその日に
実際に「何か良いことがあって」嬉しくなった、という経験は
誰にでもあると思います

これは

『何か良いことがありそうな気がする
=よくわからないけど、きっと何か良いことがある
=本当に良いことがあった!』

「良いことを引き寄せた」でのはなくて
「きっと何か良いことがある」未来を想像したから
本当に良いことがあった未来を創造したのです

そう考えると
陽菜の力は誰もが日常的に使っている力であって
特別な誰かだけが使える力ではないことが分かりますね

✦✦✦

天気を変えられる力を持つ天気の巫女は
いずれ天に還ってしまう、という「悲しい運命」も
「天気の巫女には悲しい運命がある
だからそれに従わなければならない
(大勢のために)天気の巫女1人を人柱にしなければならない」
という
「思い込みや慣習」から「悲しい運命」を創造してきたのです
これは言うなれば
「○○しなければ△△になれない」という「呪い」です

天気を変えられる陽菜ならばきっと
天に還らない未来を創造することもできたのに
いちどは言い伝え通りになってしまったのは
「力を使いすぎたから、言い伝え通り自分は死んでしまう」
という呪いを、自らにかけてしまったから

✦✦✦✦

天に還ってしまった陽菜を取り戻すため
帆高は警察から逃げ出して奔走します

ここでの警察という権威、大人たちの登場は
「世界はこうでなければいけない」
わたしたちが逃げられないと思わされている「権力」
そして「古い価値観」「思い込み」の象徴と考えられます

帆高が権威と権力の象徴である大人たち---古い価値観の---
手から逃げ続けたのは
思い込みから逃れて自らの幸せを掴みに行くため、
「〜でなければならない」呪いを突破して
自分の幸せを得るためです

何も知らない人たちから
口先だけで止められようが
指をさされて笑われようが
この思い込みを突破しないと
欲しい未来を得られないから
そのために諦めずに走り続けたのです

✦✦✦✦✦

空の上で再会し
わたしが晴れ女をやめたら天気が元に戻ってしまう、と言う陽菜に
帆高がかける言葉にはとても強い力があります


「もう晴れ女なんかじゃない!」
「2度と晴れなくて良い、青空より陽菜が良い!」
「自分のために願って、陽菜」


これは
晴れ女=天気の巫女は天に還る、
〜でなければならない、という呪いから解放されて
自分が心から望む未来を創造するためにその力を使って、
誰かのために自分の幸せを犠牲にしないで、
というメッセージです

誰かのために願えるのはとても幸せなこと
だけれど
誰かの幸せのために
自分を犠牲にする未来を創造しなくて良い
自分の幸せのために未来を創造して良い
そうすることが世界を変えることだ、

帆高は陽菜に、
そしてわたしたちに、伝えてくれたのです

✦✦✦✦✦✦

3年後ふたりが再会した時には
降り止まない雨の影響で水に沈んだ
「形を変えてしまった」東京が描かれており
生態系に変化が起きていること
東京が新しい形で再生されていることも示唆されています

劇中で何度も出てくる
「世界を変えてしまった」は

「天気の巫女は天に還る」という言い伝えを破って
陽菜を地上に戻したから
世界(東京)の形が変わってしまった、
生態系や地質が変わってしまった、ということではなくて

「古い言い伝えや慣習
他者や自らにかけた呪いから解放されることで
どんな未来も創造できる世界(自分)になった」ということ

その意味で
「世界の形を変えた」んです


降り止まない雨の中
水に沈んだ東京はもともと海のあった場所であり
天気と人間が変えてきた
知識と技術の集大成である現代の東京が
再び水の中に沈んでいる、ということは
数多の栄養を豊富に含んだ羊水の中で
新しい命や可能性を育んでいる最中であり
日光が不足すると咲くはずのない桜が咲いているのは
その羊水の中から
新しい未来と希望、そして愛を生み出していることの象徴です


だから、だからこそ、
世界の形が変わってしまっても
これまでの常識や思い込みを捨ててしまっても
「僕たちは大丈夫だ!」

そして

「愛にできることはまだあるかい」
「愛にできることは、僕にできることは、まだあるよ」

と続いていく


わたしたちひとりひとりは創造主であり
どんな未来をも創造することが出来る
だから
自分の幸せを追求することを諦めなくて良いんだ
諦めちゃだめなんだ-----

これが「天気の子」から
わたしが受け取ったメッセージです


そして
これまでの常識を疑うことの重要性
どんな不安も逆境も
愛と情熱で乗り越えられることをも
伝えてきてくれていると感じています

さらにはこれは
新海誠監督のアニメーション作品だからこそ
わたしたちが受け取ることが出来る
神さまからわたしたちへの特別なギフトであり
重要な鍵である、とも


君の名は。の上映直後から
3年後の夏休みの公開に間に合うように制作されたこの作品
これだけのメッセージのある作品が
よりたくさんの人の目に触れる機会がある
夏休みに公開されることの、この素晴らしさ

きっと大きなプレッシャーの中で
大ヒットした前作を
はるかにはるかに超えた作品を創造して
わたしたちに魅せてくれた監督とチームの皆さんが
「天気の子」のメッセージである
過去(の自分)は超えられるよ、ということを
体現されていることの、有難さ

それらを想うだけでも胸が震えますが
なんにせよ
2019年のこの時代を生きるわたしたちが
この作品に触れられることは大きな喜びです


わたしたちはこの作品を通して

自分の叶えたい未来のために
何を思い描き
何を選択するのか
いかに行動するのか

考える機会とその鍵を与えられたのですから

✦✦

この作品が生み出されたことに
生きて、出会えたことに
心からの感謝と喜びを伝えます

そして
この作品に触れた人たちに
たくさんの祝福がありますように!




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The real voyage of discovery consists not in seeking new landscapes,but in having new eyes. --- Marcel Proust

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